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Artist Statement

 私の金属造形作家として表現したいことは一言で言うと子供心である。それは、子供の時に初めてのことを経験したり珍しいものを発見した時に感じた胸高鳴るような高揚感。私は昔から生き物に大変興味があり、飽きることなく図鑑を開いてはまだ見ぬものを想像し、一日中昆虫採集に明け暮れているような子供だった。その思いは大人になった今でも変わらず、生き物は作品制作において絶対的な主役であり、なくてはならないものである。生き物をモチーフとして制作する一番の理由は、やはり人工的には決して作ることのできない、長年の進化の中で作り上げられた造形美に魅力を感じているからであり、その美しさを自己の感性で表現したいと思っている。

    私は表現手段として彫金技法というものを用いているが、彫金というのは日本古来の伝統技法で、鎧金具や刀槍金具、帯留などを筆頭とした装飾を主体とした金工技法である。その特徴は驚くほどに繊細な細密表現と金属とは思えない多彩な色彩表現だ。その中で造形において私が主に用いてる技法は打ち出しという技法で、金属の板材を裏から叩いて膨らませ、表から鏨という道具で形成していくというものだ。この技法はレリーフとして多く用いられるものであるが、自分なりに応用し、立体表現している。板材から加工していくということもあり、今でもとても難しく、手間のかかる技法だと痛感している。
ただ、難しいからこそ昔できなかったことができるようになっていたり、効率を上げることで作業ペースが上がっていたりと様々な発見があり、自分の成長を感じられる楽しさがある。出来上がったものを見て、これが板からできてるのか!と最も驚いてるのは自分なのかもしれない。

   この技法に魅力を感じているもののもう一つは色彩である。伝統的に伝わる色揚げの方法に加え、現代的な様々な方法を用いることで金属という素材の中で豊かな色彩表現に挑戦している。それというのは金属という硬く冷たいイメージのある素材を、空間を明るく彩る存在として表現したいという思いがあるからである。

    私は自分の作る作品がその人にとってのラッキーアイテムであってほしいと思っている。それは手に持った人が私の提案するものに驚き、共感してもらうことや側に置いておくことで生活空間が明るなり心が豊かになるような、そんなコミニケーションツールとしてあり続けたいと考えている。

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